たべるの

好きなこと。

2017年4月21日
高橋 忠和高橋 忠和

「もう、あなたは好きなことばっかりやって、良いわよね。嫌なことはみんな他の人に放り投げてしまうんだから」
小さい時に母に言われ、学校の先生にも言われた。友達にも似たようなことを言われたと思うし、少し成長してからは、お付き合いした人にも同じようなことを言われた。なんと、仕事をしていて、取引先の人にも言われた覚えがある。

自分では、好きじゃないことも結構たくさんやってきたし、嫌なこともやったと思っている。
苦虫を噛み潰したような、死にそうな、そんな顔をしてやったことがあると思っている。

でも、どうなんでしょうね。

ある程度歳をとると、苦手な人とは疎遠になるし、場違いな場所にも立ち入らなくなって、本当に嫌なことに出会うことがなくなってきた。

ますます、好きなことしかやっていない。

畑をユンボで開墾してもらい、大きな木の根の残骸を整理している。
スコップで新しい畑の土を掘り返し、土の中に潜んでいる根っこを引き出し、引き抜き、一輪車に積み重ねて、廃棄する。流れる汗を土のついた手で拭うと額にまで泥が付く。膝も土、お尻も土だ。
息が上がってゼイゼイいうけれど、多分、ひどい顔をしているのだけれど、これは嫌なことじゃない。
むしろ好きなことなのだ。辛いけれど、好きなこと。

嫌いなことをやっていない。誰かに押し付けて、済ましているのだろうか。
不明の中にいる自分には、そのことは解らない。

掘り出した根っこの匂いとか、草の匂い、自分自身の汗の匂い。
夏が近づいてくる。だんだん強くなる日の光の中で、あらためて思った。

好きなことしかできない。

コメント