たべるの

なんとか、一年やってきました。

2018年10月25日
さいこさいこ

今日やっておかないと、まずいよな……仲間が草を刈っているのを横目に、ひとりネギに追肥と土寄せをする。茄子の葉、もう夏バテしているな……やっぱり今日根切りしましょう、と作業を決める。この作物は育つのに半年以上かかるんだよね……次のシーズンも見こして畑の割り付け表をつくる。

この一年、ずいぶんと真剣に畑のマネジメントを行うようになった。そう、それまでは貴方がやってくれていたから、甘えていればよかったのだけれど。

昨年、秋、私たちの畑リーダーが、病にたおれた。白菜、キャベツ、カリフラワー、プチベール、、、冬野菜の苗を定植し、ことしは追肥を最低限にしてみようか、と話していた。初めて挑戦するビーツの成長に、心を躍らせていた。前の週にニンニク・らっきょうの苗を仕入れたものの、植えつけは来週以降でいいか、と手つかずのままだった。そんなタイミングだった。

人がたおれたのだから、畑どころではない。それは当然だけれど、野菜たちに人の事情は関係ない。野菜は時間を待ってはくれない。

「少しの間、畑をたのみます」そう託され、そうか、いま自分ができることって畑のおモリかもしれないなと思いを巡らす。これからどうなるのか不安に答えが出ないなら、とにかく野菜を見てみよう。

初めて独りで畑を訪れた。見慣れたはずの景色がどこか違って感じられる。ひとり仕事のささやかさを思い知る。背に腹はかえられず、しばらくお休みしていた昔の畑仲間に、手伝ってと頼んでみる。こころよく駆けつけてくれた。

そうして時間が過ぎるなか、タイミング的にこれ以上“待ったなし”のニンニクとらっきょうを、植えつけた。収穫までは半年以上かかる。これから、どうなるのか、なんて言っちゃいけない。育てるのだ。私自身への誓いのような作業に妙に力が湧いたことを覚えている。

冬の陽ざしを浴びたカリフラワーやビーツは、とびきりの鮮やかさで育った。秋の長雨をよろこんだ里芋はねっとり美味しく、ひさびさに大きく育った春のカブは甘く。初夏の人参もズッキーニもジャガイモも、ムシのついた空豆も、育ちすぎた玉ねぎも、みんなみんな愛すべき作物で。気づくと季節は巡り、猛暑の中も畑にむかう私たちがいた。

あらためて野菜づくりの教本をひらくようになった。ネットで調べるのが念入りになった。順ぐりに、やるべきことをやっていく、今までと変わらないのに、何かが違っている。

この一年、いままで以上に畑に教わった。怠けちゃいけないことを怠けずにやる充実感。自然には抗えないこと。収穫物がそこにある有難さ。

若者がひとり仲間に加わった。「ルッコラにあわせて肉料理つくっちゃいましたよ」「耕運機、まかせてください!」野菜をしっかり愛し、よく働くナイスガイである。畑が人を育んでいく。

畑は、とまっていない。2018年秋、私たちは再び土を耕し、白菜、キャベツ、カリフラワー、プチベール、、、と冬野菜の苗を植えた。初夏に漬けた、らっきょうを愛でながら、来年のために植えつけを進める。冬にむけて作物が育っていく様子を想像しながら、早くもニヤニヤしている。大丈夫、なんとか、一年やってきました。また、こうしてやっていくのだ。とまらない畑に、ありがとう。

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