たべるの

オーガニック

2016年12月13日
高橋 忠和高橋 忠和

フランスのオーガニックスーパーマーケット「ビオセボン(Bio c’Bon )」日本1号店が12月9日、麻布十番にオープンした。
これまで日本にもオーガニック=有機栽培に情熱を傾ける農家はたくさんいたが、オーガニック食品を求める客は意外に少ない。苦労して作ってもあまり売れなかったのだ。
しかし、時代は動く。「ビオセボン(Bio c’Bon )」のオープンには多くにメディアが注目し、スタートアップの客足も好調のようだ。農業大国でオーガニック後進国と言われた日本ではあるが、これを契機に、いよいよオーガニックの風が吹くのだろうか。

私はと言えば、オーガニック至上主義ではない。多くの人と同じだ。オーガニックは良いけれど、そうではない食品もかなり高いレベルで安全が担保されている日本で、ことさらオーガニックでなければ、と思うことはなかった。

これは、畑をやっている自分としても同様で、有機農法をやっていないし、やろうとも思わなかった。
たまたま先輩に教えられて3年前から使っている肥料は有機だが、農薬も使っている。ごく限定的にであるが。
大自然の中で、人が努力し、工夫して農業をする。その成果として作物を得る。大きな報酬を受け取ることもあれば、無惨な結果に終わることもある。それは自然と闘うということではなく、自然の中でジタバタするということなのだ。肥料や農薬もその努力や工夫、ジタバタの1つだと思っている。

何年か休耕地であった今の横浜の畑に来て4年。ひたすら土を耕し、肥料を与えた。作物は順調に育ったし、必要に迫られた時は農薬も使った。草を刈り、また耕し、種を蒔き、苗を植えた。豊作の時は大喜びしたし、不作のあとはさらにせっせと耕した。汗を流せば畑の土は黒くなり、フカフカになった。

強いられたわけではないが、努力は報われなければならない。私たちの畑は豊作が続くはずだった。
だが、そうはならない。

昨年の春、あと10日ぐらいで収穫という時にソラマメが突然黒くなって枯れ始め、あっという間に全滅した。
夏のナスも最初は良かったが、後半はチャノホコリダニという害虫の被害を受けた。
冬になると、あれほどうまくいっていたハクサイが、病気や害虫被害で1/4ほどダメになった。
ハクサイは今年もひと畝に12株苗を植え付けて、そのうち11株が害虫にやられた。生き残ったのは僅か1株。
天候の所為もある。それにしても結果が酷すぎる。呆然とした。

考えてみると、この畑に来て最初に種を蒔いた時、初めて苗を植えた年は、みなうまく育った。
2年目、3年目になって、怪しくなるのだ。どうしてだろう。あれほど手堅いコマツナさえ、今年は害虫被害を受けたのだ。

苗を寒さから守るにはマルチが良いよ。保湿もできる。農薬をできるだけ使わないようにするには防虫ネットが効果的と聞けば、支柱を立て、防虫ネットのトンネルで苗を守った。追肥や土寄せは欠かさないし、挙げ句の果てに予防的な農薬まで使った。

このようなジタバタが、逆に作物をひ弱なものにしてしまったのではないか。
害虫に耐性をつけて強化してしまったのではないか。

防虫トンネルは不十分、やっぱりハウスだ。土を使っている以上作物の成育を正確にコントロールはできない。水耕栽培だよ。野菜工場だ。
知らず知らずのうちに、ずいぶん特殊なところに踏み込んでしまっていたのではないか。

一回りしたあとで、今、オーガニックのことを考えている。
作物も、人間も、もっと大らかなものでありたいのだ。

2017年は、あらためてオーガニックに向き合う年になるかもしれない。

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