たべるの

台風と線状降水帯

2015年9月15日
高橋 忠和高橋 忠和

激しい雨がとめどなく降り続けた。線状降水帯という言葉も始めて聞いた。
種を蒔いたばかりの畑が心配だった。

今年は残暑というものが全くなくて8月末から天候は崩れ、気温がストンと落ちた。
9月に入ってもずっと雨の日が続いたまま、冬野菜の苗の成長に最も良い気温、冬野菜の種の発芽に最適な気温は25℃から30℃と言われているが、そのちょうど良い季節がみすみす目の前をすり抜けて行こうとしていた。

最適の気温を外すと、その後の作物の成長が決定的に悪くなることは、これまでの経験で身体に沁みていた。多少の雨でも苗を植えることにした。わずかでも晴れ間があるならウィークデイでも畑に行くことにした。そうやって、なんとか雨雲の動きと駆け引きしながら、今年の冬野菜の苗を植え、種を蒔いた。日照が少ないが、どうぞ無事に育ってくれと祈る気持ちだった。

そこに台風17号と18号、そして線状降水帯だった。

ちょうど三浦半島の付け根、逗子鎌倉のあたりから横浜の畑のすぐそばを通ってさらに真っすぐ北へ、強い雨雲が居座って動かない。記録的な大雨になった。茨城県の鬼怒川が決壊して家も田も畑も流された。
東京のオフィスの窓から雨を見ていた。我々の畑が無事に済むとは思えなかった。蒔いた種は雨に流されただろう。苗が倒れているかもしれない。最悪の場合は畝そのものが壊れているかもしれない。

台風が過ぎたあとの日曜日。その日も朝まで雨だったが、とにかく畑に行くことにした。
たとえどんな被害を受けているにせよ、それを受け止めるしかない。まずは確かめよう。

結論から言うと、私たちの畑は無事だった。キャベツやハクサイ、ブロッコリーの苗は元気だった。大雨の直前に種を蒔いたコマツナ、ルッコラ、ダイコン、カブが、みな芽を出していた。
種をどの程度の深さに撒き、覆土、どれぐらい土を被せるか。それがとてもうまくいっていたのに違いない。しかし、それにしても幸運だった。運が良かったのだ。
肩に力が入っていたのがスッと抜けていった。


どうせ趣味の畑だろう。畑で食っているわけじゃないんだ。どっちに転んだって良いじゃないかと言わないでいただきたい。土を作り、肥料を与えて、害虫も退治する。種を蒔いてから収穫し、それを家に持ち帰って料理して食べるまで、自分で育てた命を自分が食べている。趣味だからこその真剣ということがある。だからこそ全身で一喜し、一憂する。

一生懸命やったのに、工夫したのに、それでもダメな時がある。逆に今回のように、おそらくこれはムリだろう、そう思っていたのにうまく行く。そんなときもある。
それ全部を受け入れている。そして次へ進む。それしかない。

畑が、そう教えてくれたのだ。
今回の大雨被害に遭われました皆様に心よりお見舞い申し上げます。一刻も早い復旧を衷心よりお祈り申し上げます。

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