たべるの

メークイン。

2015年7月14日
高橋 忠和高橋 忠和

5月の女王は紫色の花をつけ、6月の夜露に濡れている。
5月の女王は真夏の夜の夢となる。

古くヨーロッパでは、5月祭(メーデー)のころに牛や羊を野山に放ち、10月末のハロウィーンの日まで、家畜が無事でいますように、農作物が豊かに育ちますように、神に祈りを捧げてきたそうです。
メイ・クイーンは、その5月祭の先頭に立ち、この世のすべての成育と繁殖を祝う、5月の女王です。

今年、いつもの男爵と並んで、わたしたちのジャガイモ畑にメークインが育ちました。その名前の由来は5月女王メイ・クイーンからきているのですが、日本では正式名称としてメークインとされています。

食べるとホックリの男爵の食感に比べて、メークインはネットリ濃厚。煮崩れしにくいということもあって多くの人に愛されるジャガイモの代表的な品種です。

男爵より成長がゆっくりで、粘った方が大きな成果を得られると聞いて、7月に入ってからの収穫になりました。
梅雨のただ中の収穫ですから、ジャガイモ畑はともすれば雑草に覆われがちです。
メークインの収穫の前に、まず草刈りから始めなくてはなりません。
これが結構キツい。まだ身体が夏の暑さになれていない所為もあって、すぐに息があがります。

ようやく顔を出した畝の山に慎重にスコップを入れて、ボコッと土を掘り起こす。
ほら、メークインが見えている。
そこからは手作業です。
触れると熱いぐらいの畑の土から、あのトロリとした滑らかな形状のメークインが、次から次へと溢れてきます。

ひと山掘ったら次の山。作業を繰り返すうちに意識が朦朧としてくる。
大豊作です。

7月の暑さのためにクラクラするのか、ひょっとして森の妖精パックによって、まぶたに花の媚薬を塗られたせいか、美味しいメークインは、真夏の夜の夢となりました。

コメント