たべるの

山仕事。男の仕事。

2010年1月22日
高橋 忠和高橋 忠和

冬の畑は、山仕事。男の仕事の季節です。
「おらぁ、どけどけ」「なにやってんだよ!ったくもう」「うるせぃやい」
淑女のみなさんが聞かれたら眉をひそめるような、まったくもって粗野で下品で荒々しい。

ヴィーンヴィーンと電気ノコギリの音が鳴り響き、ズドーンと樫の大木が倒れて来ます。
15mを超える巨木は予想以上に枝が広がっていて、ボンヤリ突っ立ている私の肩先30cmをかすめていきます。
「大丈夫?もう少し下がっていなよ」お茶とおまんじゅうをくれたりして、荒々しいけど初心者には優しい(笑)

バッバッバッと草刈り機が、あたり一面に群生する笹を刈り取ります。
ゴッゴッゴッとユンボ(パワーシャベルみたいなやつ)が山壁を崩していきます。

「この畑から栗林まで、クルマで入れるようにしたいなぁ」石井さんがそう言うのを何回も聞いていました。
「何年も前から言っているんだけどね、みんなの都合が上手く噛み合なくて」

もともと葉山の畑の一帯は、その昔は全部田圃だったそうです。小さな山に囲まれた小さな田圃が、いくつもいくつも段をなして山の奥まで続いていたそうです。村の人や農家の人が通う道もあったのです。
それから長い時間が経ちました。かつての田圃は原野に戻ってしまった。
笹やススキが野を覆い、山にはケヤキ、カシ、クヌギ、シイ、タブ、ブナといった様々な木が、10mから15m、高い木は20mを超えるものまで、てんでばらばらに伸び育ち、私たちが栗畑へ行くときは、それこそ枝をかき分け、身長と同じくらいの高さの段差をよじ登って辿り着くという有様になっていた。

ヴィーンヴィーン。倒した木は、それが上等の薪になるものは、長さを揃えて切っていきます。80cmとか40cmとかにね。それを軽トラに積み込むのもけっこう重労働。「オラヨッ」参加メンバーは、ほとんど50歳オーバーのおっさんばかり。それでもみんな元気です。「おい、こら!」粗野で荒々しくて、でもちょっと優しい。
薪にもならない雑木は、そのまま新しく作る道の路肩になります。土停めになります。

このお正月の成人の日を入れた3連休と翌週の土、日をかけて、山仕事は続きました。
ケモノ道みたいだったものが、少しずつ軽トラで入っていけるようになりました。
すぐそばで大きな影を作っていた、いくつかの木も切り出して、畑の陽当たりも良くなりました。

最後の日曜日の午後。近所の奥様たちも見物にやってきて「ほう、立派な道ができたじゃない」
お母さんのような褒め言葉です。
「これで栗林の横にも立派な畑ができるしな。トラックで水も運べる」
我らが少年探偵団長石井さんは、それこそ少年の笑顔です。
彼の背中の向こうに、完成した「新しい道」が輝いています。
私たちの畑から栗林に繋がる道です。

明日へ繋がる道。

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