たべるの

12月の畑

2015年12月8日
高橋 忠和高橋 忠和

11月の記録的な暖かさと平年を大幅に上回った降水量は、畑の野菜を急激に肥大させ、過剰な生産が市場価格の値崩れを起こした。大きすぎて流通に適さないダイコンなども出て来る始末で、全国的に農家は打撃を受けることになった。

皮肉なことに、大きく育ち過ぎた野菜は、我々週末農家にしてみれば嬉しいご褒美だ。私たちの青首ダイコンも三浦ダイコンも、畑から引き抜くたびに歓声があがるほど巨大に育った。春菊も水菜もコマツナもホウレン草も豊作だ。

とは言え、暖かい気温と大量の雨は、私たち週末農家にまた違った被害をもたらした。
それは害虫被害だ。野菜も大きくなれば、雑草も繁茂するし、害虫も大量に発生する。
プロの農家のように毎日目を配っていれば防げる被害も、週末だけ畑に来る我々には無理だ。
私たちの畑のハクサイとキャベツの半分が害虫に喰い尽くされた。お隣の畑ではハクサイが全滅したらしい。これにはほんとうにガックリ来たなぁ。
11月後半になって豊作となったカブも、10月末から収穫予定だった第1陣は、害虫被害でのほぼ全滅していたのだった。

良いことも悪いこともあった11月だった。
12月に入って畑はようやく落ち着いた。

まず、天気が安定している。気温も平年並みになった。
大騒ぎのうちに種蒔きのタイミングを逸してしまったソラマメや絹さやも、苗を植え付けることによって楽しみを来年に繋ぐことができた。

来春のジャガイモの植え付けまで、畑ではもう新しく種を蒔いたり、苗を植えることはない。
収穫だけが仕事だ。気楽なのだ。

今日は畑でベーコンを作っている。
10日前から特別のソミュール液に漬け込んだ豚肉を、畑で4時間かけて燻煙している。
冬野菜の収穫は2時間ほどで終わってしまった。
ベーコンの隣で炭焼きした鶏肉や魚のランチをゆっくりいただいてもまだ時間は余る。
漂う煙を目で追って、冬の空を眺める。

街中でこんな香りの煙を出したら問題になるだろうが、畑ではのんびりしたものだ。
そばの柿畑の実を狙ってこの季節にだけ集まるスズメがピーチク騒ぐばかり。

燻製窯を囲む我々も煙に包まれ、周りの果樹もおいしい香りに染まり、やがて畑いっぱいに広がっていく穏やかな気分。

12月の畑だ。

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