たべるの

妖精はキャベツの中にいる。

2014年11月21日
高橋 忠和高橋 忠和

キャベツ畑を歩いていたら突然ウサギが現れて、あなたに話しかけたり、いく層にも重なるキャベツの葉の中の、温かくて居心地の良い部屋に招待されたり、それを食べるとロバになってしまうキャベツがあったりと、キャベツを題材にしたおとぎ話や童話は沢山ありました。
半世紀も前なら、たとえあなたが大都市に暮らしていても、ちょっと足を伸ばせば、山があり、森があり、畑が広がっていて、キャベツのおとぎ話などもずいぶん身近なものに感じられたものでした。
でも舗装道路が延びて工場やビルディングが建ち並び、森はもちろん、山だって消えてしまうことがあるくらいですから、畑は私たちの暮らしから遠くなりましたね。おとぎ話や童話の住処も遥か彼方です。
(今の子供達は、はたしておとぎ話や童話に、ほんとうに触れることができているのかなぁ)

キャベツの苗を植えたのは9月のはじめ。それから1ヶ月かけて外葉の直径が60cmぐらいになりました。
この畑にピーターラビットは現れませんが、モンシロチョウがヒラヒラと飛んできます。彼らの子供、アオムシはキャベツの大敵で、葉っぱをムシャムシャ食べます。だから若いキャベツの苗は防虫ネットに入れて育ててきました。

10月の半ば、成長したキャベツは防虫ネットのトンネルの中には収まらなくなってきました。外に出します。もっと大きくなれよ。

キャベツの大きさは、この頃の外葉が、どれくらい大きく広がるかで決まるのです。
いよいよ結球が始まって、その結球した葉の中で、新しい若葉が次々に生まれて、中から外へ、ギュッと詰まってきます。

10月下旬。外側の葉は少し虫に喰われたけれど、中は無傷。大丈夫のようです。
11月になりました。気温がグッと下がってくると、寒さから身を守るため、キャベツはギッシリと葉を重ね、いっそう重さを増して、甘くなります。

11月半ば、私たちにとって初めてのキャベツを収穫しました。綺麗だ。3.5kgもある大玉です。

キャベツを使った料理と言えば、まず思い浮かべるのは超定番ロールキャベツ。最近TVコマーシャルで盛んに宣伝している回鍋肉も、日本ではキャベツを使った料理になっていますね。ザワークラウトが大好きって言う人もいるでしょう。関西の人ならお好み焼きに入っているキャベツですよね。

一年を通じて産地が移り変わり、常に手に入る野菜です。私たちの毎日に馴染みの深い野菜です。
でも、キャベツが畑でどんな風に育ってきたのかを知る人は、ほとんどいません。
キャベツのおとぎ話や童話を覚えている人も少なくなってきました。

すっかり大人になってしまったんだな。フッとため息が出る夕方は、キャベツを使った料理をしましょう。
外側の葉から、千切れないように慎重に外してください。冬キャベツは葉がビッシリ重なって巻きが堅い。
1枚、2枚、3枚。気をつけて。

重なるキャベツの葉の中に、あなたは忘れていた何かを見つけるかもしれない。
遥か昔は良く知っていた、あのキャベツ畑のおとぎ話。

妖精はキャベツの中にいる。かもしれませんよ。

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