たべるの

まだ伸びる。もっと生きる。

2011年10月20日
高橋 忠和高橋 忠和

稲刈りの終わった田んぼには、切り株だけががズラリと並んでいますが、その枯れた茶色の株の上に、なにやら若い緑色が、風に踊っているのに気がつきます。近づいてよく観ると、切り株から新しい稲の若芽が伸びて、葉をつけ、穂まで出来ている。二番穂(にばんほ)というものだそうでです。孫生え(ひこばえ)または穭(ひつぢ)、ひつぢ田とも呼ばれているようです。

種蒔きから田植え、そして収穫と、ひとつのサイクルが終わってなお、さらに二番穂が生えてくるなんて、すごいですね。
「まだ伸びる。もっと生きる」そう言っているみたいです。
田や畑は作物の生産工場なんかじゃないし、作物は野菜の生産機械なんかじゃないよ。
「まだ伸びる。もっと生きる」
稲も野菜も、わたしたちと一緒。それぞれが命を授けられた生き物たちなのだ。と。

切り株の下、土の中の根っこに、その力が残っていたのでしょうが、それだけでは生命を再生することなんてできない。根っこを支える土の力、文字通り「地力」が、この土地にはあるのですね。

田んぼの土に指を入れてみました。温かいなぁ。
二番穂だけじゃありません。あたりの花や草や森の樹木も、虫も獣も、わたしたち人間も、みんなこの土の力「地力」に支えられて繋がっている。そう感じる温かさです。

今年は大地震、津波、放射能汚染、台風と、過酷な試練が襲いかかってきましたが、それでもなお、
「まだ伸びろ。もっと生きよ」と、大地はいつも、わたしたちの命を支え続けてくれているのだ。

秋の田んぼに鮮やかな命の色、若緑の二番穂が風に揺れているのを見て、わたしは、そんなことを思いました。


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