その場所へ。
どうして、私は畑にでかけるのだろう。収穫した新鮮な野菜はほんとうに美味しいけれど、目当てはそれだけだろうか? このあいだなどは、ひたすら冬の山そうじで、リラックスというより労働だったよな、やれやれ。
なーんて、首をかしげるふりもできるけれど。実は私は気づいている、自分が畑にでかけるわけを。
土をさわってホッとする。仕事を忘れてリラックスする。野菜の成長を実感する。確かにそれも含まれる。でも、その根底にあるもの・・・それは、いつもと違う「価値観」を思い知る快感があるからだ。
たとえば地上30cmの風景。畝の間にしゃがみこんだ時に見える土、目の前の人、それらが放つ温度や匂い。たとえば「へっぴり腰だなぁ」の叱咤。もっと上手にカラダを使えば、人は(私は)もっと動けるのだ、力が出せるのだ。たとえば「さいこさん」とファーストネームで呼ばれる休日。職業や肩書きとは無関係なおしゃべり。たとえば思い通りに成長しなかった野菜のリアル。しっかり育った野菜の強さと優しさ、とびきりの美味しさ。たとえば、たとえば・・・
そこにある価値は、私が今いるこの場所にもきっとあるのだろう。しかも私はすでに知っているのかもしれない。生まれる前から知っていることを、思い出しているだけなのかもしれない。知っているのに忘れている修行のたらぬ私は、もっともっと思い知りたくて、また「その場所へ」畑へとむかうのだ。
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