焼きりんご
秋の果物は数あれど、りんごに特に思い入れがあるのは、
わたしがりんごの産地で育ったからなのだと思います。
実家の周囲にはりんご園と田んぼが交互に広がり、
道路には堂々と「りんごの里」という看板が立っていました。
わたしにとって、りんごとは「ふじ」か「サンふじ」でした。
地元で作っているのは主にその2種類でしたから。
ですが、大人になってから、魅力的なりんごに出会いました。
「紅玉」です。
その名の通り、真っ赤で、艶やかで、甘酸っぱくて。
紅玉は、そのまま食べるより、料理するとさらに魅力が増します。
加熱することで、生にはない、ゴージャスで豊潤な味わいを発揮するのです。
アップルパイ、タルトタタン、りんごジャム…
どれも紅玉で作るのと、そうでないりんごで作るのとでは、
明らかに到達する「おいしい」の高さが違う。
今日はとても良い紅玉が手に入ったので、焼きりんごを作りました。
最もシンプルに、紅玉のおいしさを堪能できる食べ方です。
作り方は至って簡単。
芯をくり抜き、そこにお酒(ラム酒やブランデーなど)を大さじ1、
その倍の量のお砂糖と、大さじ1のレモン汁とバターを詰め、
シナモンスティックを刺して200度のオーブンで20分。
ちなみに今回、お酒は辛口のスパークリング・ワインを使いました。
酸味が豊かなスパークリング・ワインや白ワインを使う場合は、
レモン汁は必要ありません。
ああ、焼き上がった焼きりんごの香りが、鼻腔をくすぐります。
口に含むと、甘さが押し寄せ、次に酸味が追いかけてきて、
ついつい夢中で頬張って、あっという間に平らげてしまう。
この切ない感じが、秋なんですねぇ。
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