この夏は、この夏の。
むしろこれからの人生を確認しあうはずだった友人が、逝ってしまった。たてつづけに恩師の訃報、社会人の入口で、アマチュアからプロの世界にひっぱりあげてくれた人である。汗と涙が入り混じって流れる酷暑の中、夏野菜がぐんぐん実をつけている。初獲れの大玉トマトは、想像以上の甘さでカラダをふるわせ腹の底におさまった。去年より色ツヤのいい茄子は、笑っちゃうくらい豊作でちゃんと食べよと急かしてきた。
野菜がうまいのは生きている証だし、笑っちゃうくらいなのは笑いなさいと言われているからだ、きっと。土汚れが、ありがたい。渇く喉が、いとおしい。旬の野菜が、うまい。
野菜たちは季節や環境に正直にその姿をみせ、毎年いろいろ教えてくれる。枯れていくことの必然も、生と死が一体なこともお前は知っているだろう…雑草をむしり、そこにいる虫をおいはらえば、やさしい囁きがきこえる。思わぬところに生えている(たぶん種が飛んだのだろう)大葉のたくましい姿にほほえみ、枯れ果てた春野菜の残骸をひっこぬけば、畑も気持ちもきれいに鎮まっていく。
大地のような友と、筆を持ちつづけた師に合掌して、耕そう、書こう。二度と来ないたった今を生かされているのなら、この夏は、この夏の、畑にいこう。
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