たべるの

僕らは少年探偵団

2009年11月17日
高橋 忠和高橋 忠和

ぼ、ぼ 僕らは少年探偵団
勇気りんりん るりの色
望みに燃える 呼び声は
朝焼け空に こだまする
ぼ、ぼ 僕らは少年探偵団 (昭和30年代のラジオ番組 少年探偵団のうた)

あの頃の男の子のポケットの中にはいつもビー玉やメンコが入っていた。ポプラの枝を自分で削って作った刀や、ようやくお小遣いを貯めて買った銀玉鉄砲は、僕らの宝物でした。
外へ遊びに出るときは、そういうお宝を全部持って出ます。刀をベルトに差し、風呂敷を首のところで結んでマントにしていました。ポケットはパンパン。走るとズチャズチャ音がする。
そんな格好の子どもが、ひとり、またひとりと路地裏から現れて、5〜6人の集団になって走り出します。
当時、学校から家までの間には田んぼや畑がたくさんありましたし、そんな畑を工場や宅地にするために、柵で囲った原っぱや草むらが、いくらでもありました。
バッタを捕まえ、ヘビをたたき殺し、チャンバラやって、メンコとビー玉の取り合い。子どもの王国だった。

木々に囲まれた小径を歩いていけば、隣の碓井さんの畑が見えてきて、さらに山道を辿った先に栗林があります。
バシッ。石井さんの巨きな身体が弾いた木の枝が、すぐ後ろを歩いている私の顔を打つ。
「イタッ」頬をおさえながら振り返ると「ハッハッハッ、山を歩き慣れていないからね」山本さんに笑われました。
そうなんです、慣れていないんです、こういうの。今収穫したばかりの栗でいっぱいのポリバケツを持つとヨロヨロします。ちょっとした坂道にズリッと足をとられる。
いったいいつの頃から、こんな人間になってしまったのか。

毎週末、畑の歩き方、鍬の持ち方、種の蒔き方、水のやり方を教わっています。
そうすると少しずつほんとうに少しずつ、遥か記憶の彼方に遠くなっていた子どものころの自分が、蘇ってくるような気がします。

サトイモの葉を揺らす風。ハクサイを鮮やかな緑色に輝かせる光。水の匂い。
そんなことで幸福な気分になったり、ちょっと不安な気持ちになったり。
子どものころは、それが全てだったなぁ。

石井さん、山本さん、隣の畑の碓井さん、田中さん。みんな楽しそうな顔をしています。
「この次はコマツナとホウレン草の種蒔きをするから」「この畑に来る道をもう少し広げたいなぁ」
などと話していますが、そんな彼らのポケットを探れば、ビー玉やメンコが出てくるんじゃないか。
そんな幸福な顔をしています。

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